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文繰文庫 ショートショート ブログ版

フミクリフミクラはショートショートのはっちゃけ文庫。文部科学雀の朝十(朝の十分読書習慣)運動を応援しています

2007-05

ショートショート 226

●壊れたのは、

「~~~だけど」
 電話口の相手の不愉快そうな中年の声。
……どこの、だれ?
「お宅に注文したアレ、まだ届かないし、
いつ来るかの電話も来ないんだけど」
「それは申し訳ありません」
 とりあえず謝りながら、
「状態を確認いたしたいと思いますので、
御社名とお電話番号をお教え願いますか?」
「なんで」
 はい?

「さっき言ったじゃない。一度言った事をまた言わせるわけ?」
「では、お電話番号を……」
「だから、電話番号だの住所だの。こっちはわざわざ登録してるんだよ」
「はあ、申し訳ありません。
では確認いたしますので少々お待ちいただけますか?」
「…………」
 返らない反応。
「ではお待ちください」
 保留ボタンを押して、なんとなく耳に残る会社名を頼りに、
文字をあてはめて調べていく。けれど、見つからない。
見つかるわけもない。
 そのうちに、保留時間終了のブザーが鳴った。

「あの、申しわけありませんが、お時間かかりそうですので
折り返しお電話差し上げてもよろしいでしょうか?」
「はあ?」
 いっそう不機嫌な声。
「こっちはあんたのところのせいで遅れて急いでるってのに、
まだ待たせるわけ? しかもすぐ調べられないとか、
どうなってるんだか。ずいぶんお偉い商売だな」
 ばかにするような冷たい笑い。
「それでは折り……」
 言いかけたところで、受話器を叩きつけたような音とともに
電話が切れた。
 おでこに、背中に。冷や汗がじっとりと流れているのに
ようやく気がついた。

「……という電話があったんですけど」
 上司に今の電話を話すと、苦笑い。
「ああ~、たぶんあそこだな。どれ」
 それだけでわかったのか調べ始めると、すぐに。
「ああ、うん。今日の朝一で
配達会社から配送済み案内が来てるな。
違う人が受け取ったりしたんだろ」
 と、あきれたように軽く笑った。
「ちょっと、お茶入れてきます」
 自分のカップを手にして、廊下へ。
 ドアが閉まると、持つ手がぶるぶると震えた。

 あんな電話をかけて……自分たちの手違い? 
なんなの、あれ。あれが人間としてまともな態度?
「……っ、この!」
 体の底から噴きあがる衝動に、わたしはコップを叩きつけていた。
 床に当たって重い音を立てながら飛び散る破片。
「なんで……この……!」
 大きいものを見つけては、また廊下に叩きつけていく。
 それなりに気に入っていたカップだったのに。
どうしても止めることはできなかった。

 壊れてしまったカップ。傷ついてしまった廊下。
 でも、きっと本当に壊れたのは、


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テーマ:ショートショート - ジャンル:小説・文学

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