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文繰文庫 ショートショート ブログ版

フミクリフミクラはショートショートのはっちゃけ文庫。文部科学雀の朝十(朝の十分読書習慣)運動を応援しています

2008-03

ショートショート 462

●スリル

 はじめはひとめを忍ぶようにやっていた。
だれもいない場所、だれにも見られない行為。
 ただそのことだけ、行為だけで楽しかった。

 それがどれくらいたった頃か、行為は加速した。
自分だけのひめやかなものじゃない。ばれればつかまるようなことだ。
 最初はそれでもたまらなく興奮した。
 だが、繰り返すうちにマンネリ感と物足りなさを
感じるようになった。本当に誰かに見られたいわけじゃない。
でも、誰かに見られる、つかまるようなギリギリが
ようやくおれを満たしてくれたんだ。
 あるときは後部座席に『それ』を置いたまま
車を走らせたこともある。だれかに気づかれれば身の破滅。
だが、それがたまらなかった。

 そのうち、家に『それ』を置いてでかけるようにもなった。
ずいぶん慣れてしまっていたし、そこまでしなければ
もう緊張も興奮も味わえなくなっていたんだ。
 だが、それだけに何にも変えがたい興奮があった。
 きっとわからないだろう。ばれてしまったときに
今まで気づいた社会的なものをすべて失う甘い破滅の予感。
それがあるからこそ、こんなおかしな行為がなによりも輝くんだよ。

 結局はつかまったわけだが……。きっと、足を洗うことなんてできない。
 いくらやめようと思っても、おれはまた、やっちまうはずだ。

「う~んん……」
 ちらばった二人分のメモをかき集めて、わたしはため息をついた。
 ようやく取材できた連続殺人・切断死体遺棄事件の犯人と、
近所で名高い露出狂の人。
 『それ』が服なのか遺体なのか。
何度読んでも文脈からは判断できずに、なんだかもう、泣きたくなった。

テーマ:ショートショート - ジャンル:小説・文学

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甘音(あまね)

Author:甘音(あまね)
めざせショートショート1050本!
いつだって全力疾走なのです。

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