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文繰文庫 ショートショート ブログ版

フミクリフミクラはショートショートのはっちゃけ文庫。文部科学雀の朝十(朝の十分読書習慣)運動を応援しています

2008-03

ショートショート 452

●唯足るを知る

 目が覚めると、見知らぬ天井があった。
「よかったぁ~!」
 真上に姉貴の顔があらわれ、おれの顔に涙をぼたぼたとこぼす。
「なん……ぐっ」
 体を動かそうとしたとたん、激痛。思わず言葉を失った。
「あ、動かさないほうがいいよ。いろいろぼろぼろなんだから、体」
「おれ、どうなってんの?」
 どうやら病院のベッドの上にいるらしいのはわかるが……
「覚えてないの? 車にはねられたっていうじゃない。
ずっと意識が戻らなくて心配してたんだよ」
「あ、あーあーあー!」
 手を打とうとして、新たな痛みにもだえてみる。

「思い出した?」
「いや、それは全然知らないけど、おれ、たぶん死んでたよ」
「え?」
 思い出すあの時間。
「知ってる? あの世ってすごく幸せなんだ。
欠けてるものなんてなにもないみたいに、ただ幸せがあって。
理屈じゃなくてわかるんだ。
知りたいと願うものは全部知ることができるし、
行きたいところにはどこでも行ける。
なんの心配も、苦労も無いんだよ。
その気になれば神の姿も、宇宙の最初の姿だって見られただろうね」
「それで、なにを見たの?」
 神妙な顔をする姉貴に。
「それがさ……」
 おれは答える。
「なんでもあるし、なんでもわかるとなると、
別になにする気もなくなっちゃったんだよね。
観光地の人が地元の名所を見に行かないのと同じようなもん?」
 姉貴はなんともいえない顔をして。
 いろいろ足りない世の中だけど。
何かをしたく思えるだけ、ここもそんなに悪くは無いなとおれは思った。

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テーマ:ショートショート - ジャンル:小説・文学

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