FC2ブログ

文繰文庫 ショートショート ブログ版

フミクリフミクラはショートショートのはっちゃけ文庫。文部科学雀の朝十(朝の十分読書習慣)運動を応援しています

2008-04

ショートショート 468

●ヤサシイナニカ

 道端の木の葉が色づき始める頃。
 一緒に街なかを歩いていた彼女が小さなくしゃみをした。
「カゼ?」
「ううん、ちょっと寒くて」
「寒がりのくせに見通し甘いから」
 着込んでいたトレーナーを脱いで渡すと、
本気で寒かったのかいそいそと袖を通した。
 だぼだぼの服のせいでいっそう小さく見える彼女。
「あ……」
 かすかに声を上げて、優しげに目を細めた。
「なに?」
「ううん、なんでもない」
 柔らかな笑顔で首を振る。

 それから夕方までぶらぶらし、彼女を送って家まで。
「えと、これ、洗って返すね」
 玄関先で言う彼女に、
「いいよ、そんなの。着て帰る」
 実は結構寒いのをがまんしていたおれ。
 受け取って着ていると、ふわりと自分のものでないにおいがした。
「ん……」
 服に残る彼女のぬくもり。静かに漂う甘い香り。
 彼女に包まれているような、
その存在をすぐそばに感じられるような。
よくわからない感じだけれど、胸がなんだかあったかい。
「え、なに?」
 彼女がきょとんと訊くけれど、
「ううん、なんでもない」
 おれは小さく首を振った。


スポンサーサイト



テーマ:ショートショート - ジャンル:小説・文学

 | HOME | 

 

プロフィール

甘音(あまね)

Author:甘音(あまね)
めざせショートショート1050本!
いつだって全力疾走なのです。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する