文繰文庫 ショートショート ブログ版

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2009-04

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ショートショート 745

●あふれてこぼれて

 教育実習で保育園に行った。
 小さなこどもたちはみんなかわいいけれど、
とりわけかわいい女の子がいる。
「あそぼー!」
 にこにこと見上げられると、何を置いても構いたくなってしまうほど。
「ほーら、くるっと返してうさぎさーん」
 手袋で簡単にうさぎ人形を作ると、
「わー、かわいいー」
 中のわたしの手ごとぎゅっと頬に寄せて、キスをする。
 そんなこの子のほうがずっとかわいくて、
一緒にいるとなんだかとろけてしまいそうになる。

 でもなんでそんな風に思うんだろう。
 おねだりがうまい? 感情表現が上手? 
……そんなことじゃない気がする。
 そこで質問をぶつけてみたところ、先生は笑った。
「あはは、あの子、かわいいよね」
「先生も思います? でも、なんででしょうね」
 するとすこしだけさみしい顔。
「たぶん、お迎えを見ればわかると思うよ」
 次の日、お迎え時はばたばたするけれど、
気をつけてあの子を追ってみた。
「おかーさん!」
 短い足で一生懸命かけていき、スーツ姿の女性の元へ。
 おかあさんらしい人は小さな体を抱き上げると、
「ただいま~」
 ぎゅっと抱きしめ、キスをする。それはそのまま、どこかで見た光景。
 瞬間、わたしにも理由がわかった。
 愛されて愛されて。愛されることも愛することも知ってるから、
あんなにいとしくて、あいらしい。
 じゃあ、知らない子は?
 そう思うと、なんだかすごく、切なくなった。
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テーマ:ショートショート - ジャンル:小説・文学

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