ショートショート 792
●ご搭乗の際は
飛行機に乗った。地に足をつけていたら
何十時間もかかる道のりをたった何時間に縮めてしまうという、
常識を逸した不気味な金属の塊だ。
正直こんなものに乗りたくはなかったが、
乗らなくては仕事にならないのでは仕方ない。
「携帯電話のご使用は計器類に悪影響を与える可能性がありますので、
電源をお切りになり、ご使用はお控えください」
なるほど。携帯電話はだめなのか。
そそくさと電源を切るが、前のほうに座っている男は
不愉快な声で電話先の相手をどなりつけつつ、
大声で仕事らしき話をしつづけた。
「お客様」
そばで声をかける乗務員にもうるさそうに手を振り
追いやろうとするだけ。
「お客様、携帯電話のご使用は計器類に悪影響を……」
ふたたびかけられる声に話口を押さえると、
「黙っててくれ。いま仕事の話をしてるだろうが」
脅しつけるようにそう言って、また電話に向かって話を始める。
「お客様!」
凛とした声を響かせ、その女性は叫んだ。
「死にたくなかったら携帯電話の電源を切りやがれ!」
座席の上で体を跳ねさせる周り。
男の手から落ちた携帯電話を拾うと電源を切り、
彼女はにこやかな笑みで続けた。
「……で、ございます」
飛行機に乗った。地に足をつけていたら
何十時間もかかる道のりをたった何時間に縮めてしまうという、
常識を逸した不気味な金属の塊だ。
正直こんなものに乗りたくはなかったが、
乗らなくては仕事にならないのでは仕方ない。
「携帯電話のご使用は計器類に悪影響を与える可能性がありますので、
電源をお切りになり、ご使用はお控えください」
なるほど。携帯電話はだめなのか。
そそくさと電源を切るが、前のほうに座っている男は
不愉快な声で電話先の相手をどなりつけつつ、
大声で仕事らしき話をしつづけた。
「お客様」
そばで声をかける乗務員にもうるさそうに手を振り
追いやろうとするだけ。
「お客様、携帯電話のご使用は計器類に悪影響を……」
ふたたびかけられる声に話口を押さえると、
「黙っててくれ。いま仕事の話をしてるだろうが」
脅しつけるようにそう言って、また電話に向かって話を始める。
「お客様!」
凛とした声を響かせ、その女性は叫んだ。
「死にたくなかったら携帯電話の電源を切りやがれ!」
座席の上で体を跳ねさせる周り。
男の手から落ちた携帯電話を拾うと電源を切り、
彼女はにこやかな笑みで続けた。
「……で、ございます」

