ショートショート 779
●絵空事
夏休み明け、いつもの講義は次回からにして、
この『生命と倫理』の授業で原爆直後の記録映像を見せることにした。
それは、悲惨という言葉などではかたりつくせないほどの
むごたらしさだった。
建物は吹き飛び、溶けて曲がり。それが衝撃だけではなく
激しい熱を伴っていたことを語る。
出てくる人々は、それが人かどうかもわからない。
白黒という限界のせいでもなくみな真っ黒で、
ある者は頭はくすだまのように膨れ上がり、
またある者は体にも服がついているのかいないのか、
男か女かすらわからないほどだった。
見始めてからだんだん目をそらす生徒が増える中、
最後まで熱心に見ている留学生がいた。
「ずいぶん熱心に見てたけど、どう思った?」
映像が終わり、訊ねると。
「白黒で画像も悪いし、ストーリーも全然ないけど、
モンスターはよくできてたね」
笑顔を浮かべる彼。
「なにを……?」
わたしは思わず口にした。
「これは史実の映画だよ? 君たちの国が落とした爆弾が
もたらしたまぎれもない真実なんだ」
気軽に笑うと彼は言った。
「その設定ははじめにも聞いたよ」
夏休み明け、いつもの講義は次回からにして、
この『生命と倫理』の授業で原爆直後の記録映像を見せることにした。
それは、悲惨という言葉などではかたりつくせないほどの
むごたらしさだった。
建物は吹き飛び、溶けて曲がり。それが衝撃だけではなく
激しい熱を伴っていたことを語る。
出てくる人々は、それが人かどうかもわからない。
白黒という限界のせいでもなくみな真っ黒で、
ある者は頭はくすだまのように膨れ上がり、
またある者は体にも服がついているのかいないのか、
男か女かすらわからないほどだった。
見始めてからだんだん目をそらす生徒が増える中、
最後まで熱心に見ている留学生がいた。
「ずいぶん熱心に見てたけど、どう思った?」
映像が終わり、訊ねると。
「白黒で画像も悪いし、ストーリーも全然ないけど、
モンスターはよくできてたね」
笑顔を浮かべる彼。
「なにを……?」
わたしは思わず口にした。
「これは史実の映画だよ? 君たちの国が落とした爆弾が
もたらしたまぎれもない真実なんだ」
気軽に笑うと彼は言った。
「その設定ははじめにも聞いたよ」

