ショートショート 825
●魔法の言葉
今日も朝から大忙し。パパを会社に送り出しながらの一仕事。
娘の着替えにおべんとう、朝のごはんに歯磨き。
幼稚園のバスに間に合わせるだけで手一杯。
……なのに。
「ほら、早く着替えて」
「ほら、早く食べて。幼稚園に遅れちゃう」
なんど急かしても言うことをきかない娘。
「じゃ、もういらない」
スプーンを置いてどこかに行こうとする。
「こら。まだ残ってるでしょ? 忙しいんだからすなおに食べてよ」
すると、
「忙しいからいらない」
その物言いに かっとして。
「なにが忙しいの! ずっとだらだらしてたくせに」
怒鳴るわたしに泣きそうな顔。
「ママ、まほうのことばって知ってる?」
「なんなの、ごまかさないで」
それでもわたしの目を見ながら、
「じぶんのこともあいてのことも、
なにもかんがえたくないときに言ってごらんって、
まほうつかいのおねーちゃんが言ってた」
「なんなの?」
こんな話してる間にも早く食べさせて用意させなきゃいけないのに。
早く続きを促すと、娘は言う。
「――『忙しい』って」
今日も朝から大忙し。パパを会社に送り出しながらの一仕事。
娘の着替えにおべんとう、朝のごはんに歯磨き。
幼稚園のバスに間に合わせるだけで手一杯。
……なのに。
「ほら、早く着替えて」
「ほら、早く食べて。幼稚園に遅れちゃう」
なんど急かしても言うことをきかない娘。
「じゃ、もういらない」
スプーンを置いてどこかに行こうとする。
「こら。まだ残ってるでしょ? 忙しいんだからすなおに食べてよ」
すると、
「忙しいからいらない」
その物言いに かっとして。
「なにが忙しいの! ずっとだらだらしてたくせに」
怒鳴るわたしに泣きそうな顔。
「ママ、まほうのことばって知ってる?」
「なんなの、ごまかさないで」
それでもわたしの目を見ながら、
「じぶんのこともあいてのことも、
なにもかんがえたくないときに言ってごらんって、
まほうつかいのおねーちゃんが言ってた」
「なんなの?」
こんな話してる間にも早く食べさせて用意させなきゃいけないのに。
早く続きを促すと、娘は言う。
「――『忙しい』って」

