ショートショート 880
●大好きっ!
彼を待って、ぼんやりと座る公園のベンチ。
「はい、どうぞ」
目の前に降りてくる紅茶の缶に顔をあげれば彼の笑み。
「あ。ありがと」
「熱いよ」
「うん」
そでを絡ませ受け取ると、彼はわたしの横で缶を開ける。
ちいさく揺れては散っていく湯気。
あたたかさか、中身のせいか、どこかうれしそうに目を細め、
どこかを見ながら軽く一口。
「ふう」
彼の体に移った熱が煙のように太く広がり、散っていく。
――ふと、わたしを映すその瞳。
「どうかした?」
優しい目線でほほえみながら。
「ん。最近……ちょっと苦しくて」
「喘息?」
「ううん」
肌に触れなくても伝わってくるそのあたたかさ。
「わたし、あなたが、好き」
驚きが照れに変わって半笑い。
「ぼくだって」
ああ、ほんとに? あなたもこんな気持ちなの?
「あなたのその目が好き。焦げ茶の瞳が好き。
細めた目も、真剣な目も、困った眉も驚いた眉も好き。
はにかむ口が好き。笑った顔も好き。癖のある髪も好き。
髪が揺れるのが好き。困ったときに小さくかくそのしぐさが好き。
深い声が好き。わたしを呼んでくれる響きが好き。
その肩も、腕も、指も爪も。みんなみんなあなたで好き。
……どうしよう。一緒にいるだけで、好きで、苦しい」
わたしを見つめる驚いた瞳。顔をそらすと、
「まいったな。そんな……」
ひとこと、言った。
それから、彼は。いつもみたいに笑ってくれなくなった。
ぎこちない顔で、なにか違うものでも見るような目。
――あきれてる。こんなわたしをうっとうしい奴だって
思ったのかもしれない。嫌われた。あんなこと言わなければよかった。
どうしよう。どうしたらいいの?
」
……という友達の話を、わたしは延々と電話で
聞かされ続けているわけだけど。
「ねえ、どうしたらいい? もうだめなのかな」
すがるような、泣きそうな声の本人とはうらはらに、
背中がむずがゆくなるようないたたまれなさがわたしを支配していく。
「あのさ」
漏れだすため息に、魂までが出て行かないように気をつけて。
「とりあえず、電話切っていい?」
彼を待って、ぼんやりと座る公園のベンチ。
「はい、どうぞ」
目の前に降りてくる紅茶の缶に顔をあげれば彼の笑み。
「あ。ありがと」
「熱いよ」
「うん」
そでを絡ませ受け取ると、彼はわたしの横で缶を開ける。
ちいさく揺れては散っていく湯気。
あたたかさか、中身のせいか、どこかうれしそうに目を細め、
どこかを見ながら軽く一口。
「ふう」
彼の体に移った熱が煙のように太く広がり、散っていく。
――ふと、わたしを映すその瞳。
「どうかした?」
優しい目線でほほえみながら。
「ん。最近……ちょっと苦しくて」
「喘息?」
「ううん」
肌に触れなくても伝わってくるそのあたたかさ。
「わたし、あなたが、好き」
驚きが照れに変わって半笑い。
「ぼくだって」
ああ、ほんとに? あなたもこんな気持ちなの?
「あなたのその目が好き。焦げ茶の瞳が好き。
細めた目も、真剣な目も、困った眉も驚いた眉も好き。
はにかむ口が好き。笑った顔も好き。癖のある髪も好き。
髪が揺れるのが好き。困ったときに小さくかくそのしぐさが好き。
深い声が好き。わたしを呼んでくれる響きが好き。
その肩も、腕も、指も爪も。みんなみんなあなたで好き。
……どうしよう。一緒にいるだけで、好きで、苦しい」
わたしを見つめる驚いた瞳。顔をそらすと、
「まいったな。そんな……」
ひとこと、言った。
それから、彼は。いつもみたいに笑ってくれなくなった。
ぎこちない顔で、なにか違うものでも見るような目。
――あきれてる。こんなわたしをうっとうしい奴だって
思ったのかもしれない。嫌われた。あんなこと言わなければよかった。
どうしよう。どうしたらいいの?
」
……という友達の話を、わたしは延々と電話で
聞かされ続けているわけだけど。
「ねえ、どうしたらいい? もうだめなのかな」
すがるような、泣きそうな声の本人とはうらはらに、
背中がむずがゆくなるようないたたまれなさがわたしを支配していく。
「あのさ」
漏れだすため息に、魂までが出て行かないように気をつけて。
「とりあえず、電話切っていい?」

