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文繰文庫 ショートショート ブログ版

フミクリフミクラはショートショートのはっちゃけ文庫。文部科学雀の朝十(朝の十分読書習慣)運動を応援しています

2010-02

ショートショート 958

●なんたらの部屋

 ゼミの旅行で何台かの車に分乗しての道すがら、
話はなんとなく怪談へと移っていった。
「じゃあ、おれか」
 こほんとせきばらいをして、助手席に座る男子が口を開く。
「昔うちの近所に古い神社があったんだ。
ぼろい社は表からは開かないんだけど、
裏には穴が開いてて小学生くらいなら入れて。
で、うわさだったのが、あの中になにか人がいるっていうんだ」
 ああ、あるある、そういう話。
「そこでおれも他に友達誘って、四人で夜中に忍び込んだんだよ」
 ……どうしてそういうこと、するかなあ。

「それからやりかた通りにみんなで黙って、暗闇の中で角に散らばった。
そして、開始だよ。おれが壁を伝って歩いて、
別の角にいる奴に触る。触られた奴は同じようにして
別の角にいる奴に触る。それだけ」
 あれ? それって……
「で、歩いてる音は聞こえるし、普通に何かやってるのはわかる。
二人目が歩いて、三人目が歩いて、四人目が歩いて……おれに触る。
そしたらおれが歩いて、一人目に触って、そいつが次のに触る。
でも、それだけ。真っ暗だし時間もわからないし、
思うだけだともう何時間も歩いてる気がしてきた。
そこで誰かが言うんだよ。『なんにも起こんないじゃん』って」
「うわ~」
 隣で上がる声。

「確かにそうなんだよな。小学生のばかがきばっかだから
全然なんとも思ってなかったんだけど。ちょっと考えてみてくれよ。
こう……部屋に四人が立つとするだろ?」
 そう言って手を上げて、四人の場所を指で示した。
「それで一人が次の角に行って、次の奴に触ると。
そこで一瞬二人になって、一人が押し出される感じだろ? 
次もそうで、その次も。でも四人目が元の場所に行くと……」
「うおっ、怖え!」
 そう。元の場所にはだれもいないから、
最初の人にだれかが触りにいけるはずがないんだ。
「でも、もう少しやってみようってことで、そのまま続けた。
おれの肩を触る誰か。おれが体を触るだれか。
次々つないでるだけなのに、何も変わったことは起こらない」
「起こってる起こってる」
「でも何も思わずに歩き続けたおれたちはさすがに疲れて
とうとう懐中電灯をつけたんだ。すると……」
 ごくり。息を殺してつばを飲む向こう、
彼はゆっくり息を吸い、叫んだ。
「部屋が三角だったんだよ!」
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テーマ:ショートショート - ジャンル:小説・文学

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