文繰文庫 ショートショート ブログ版

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2017-08

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ショートショートl 1048

●りえき。

「やあ、探したよ、母さん」
 たくましい若者が、建物に入ろうとする
派手な服の女性に声をかけた。
 振り向く女性は怪訝そうな顔で彼を見て、
「だれ?」
「まあ、見た目じゃわかんないだろうな。
でも、冬の寒い日、あんたが病院の保護装置に
捨てて行ったこどもだって言えば思い出すか?」
「え……」
 思わず声を漏らす女性。
「なにが赤ん坊用保護装置だ。
中絶や置き去りでこどもが死ぬのを防ぐ? 
中絶の痛手から母親を守る? あんなもん、
ていのいいごみ箱じゃないか。赤ん坊は麻酔なく割礼されようと、
元から泣き通しで覚えてない。
死だって死と実感することもなく死んでいくだろう。
おれは、そのほうがよかった。
なのにそれを助けて育てることになんの意味がある? 
……長かったよ、今まで。自分が親から
ごみのように捨てられたと思いながら生き続けるのはつらかったよ。
それに、あんたを見つけるまでに二十五年もかかったんだ」

 青年は言葉を吐き出すと拳を握り、女性を見つめて訴えた。
「なあ、教えてくれ。何を思ってあの日おれを捨てた? 
それについてどう思ってるんだよ」
 彼女は肩をすくめると、答える。
「もう十人以上も捨ててるし、そんな昔のこと言われたって
正直ぜんっぜん覚えてない」

テーマ:ショートショート - ジャンル:小説・文学

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