ショートショート 094
●こたえ
かつて、人の病を癒す少女がいた。
あるときを境に姿を消したその子を
一人の母親が探し始め……
ようやく、彼女と会うことができた。
質素な部屋に横たわる少女は、
しかし少女と言うには髪も薄く肌は荒れ、
一見、老女のようでもあった。
「お願いします、この子を助けてください!」
母親は苦しむわが子を抱きしめ、彼女の前に歩み出た。
「わたしは……」
こどもらしく軽いが、かすれるような声。
「病を癒すことはできません」
「どうして!」
母親は叫んだ。
「今までだって何人も助けたじゃありませんか。
この子に……この子に死ねとおっしゃるのですか」
非難の声に、少女は枯れ枝の様な
乾いた手をゆっくりと伸ばし、
こどもの頭をそっとなでる。
「わたしは、自分のいのちのかけらを
分け与えてきただけです。
もはやそれも尽きそうな今、
わたしに、死ねとおっしゃいますか」
その声には他意はなかった。
母親は息を飲み、苦しみ、考える。
……そして、口を開いた。
かつて、人の病を癒す少女がいた。
あるときを境に姿を消したその子を
一人の母親が探し始め……
ようやく、彼女と会うことができた。
質素な部屋に横たわる少女は、
しかし少女と言うには髪も薄く肌は荒れ、
一見、老女のようでもあった。
「お願いします、この子を助けてください!」
母親は苦しむわが子を抱きしめ、彼女の前に歩み出た。
「わたしは……」
こどもらしく軽いが、かすれるような声。
「病を癒すことはできません」
「どうして!」
母親は叫んだ。
「今までだって何人も助けたじゃありませんか。
この子に……この子に死ねとおっしゃるのですか」
非難の声に、少女は枯れ枝の様な
乾いた手をゆっくりと伸ばし、
こどもの頭をそっとなでる。
「わたしは、自分のいのちのかけらを
分け与えてきただけです。
もはやそれも尽きそうな今、
わたしに、死ねとおっしゃいますか」
その声には他意はなかった。
母親は息を飲み、苦しみ、考える。
……そして、口を開いた。
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