文繰文庫 ショートショート ブログ版

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2017-08

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ショートショート 263

●価値あるもの

 一般の人はお休みなその日。
ふと気になって流しでおなべをこすっていると、
夫が横からのぞきこんだ。
「なにやってるの?」
「ん? 焦げおとし」
「手伝うよ」
 二人で何をやっているのかと思うけれど、
並んでがしがしじゃきじゃき音を立てていると、
娘が足元にやってきた。

「ね~、動物園つれてって~」
「ええ? また? おとうさんに訊いてみて」
 すると夫の足元に行き、
「ね~、動物園つれてって~」
「いやだ」
「え~」
 がっかりとしながらむくれる顔。
「でも、来週で水族館なら行こうか?」
「うん、行く!」
 嬉しそうにぱたぱたと駆けていくのを見て、
「ねえ」
 わたしは声をかける。

「うん?」
「いつも優しいのに、たまになんだか容赦ないよね。
ずっと思ってたんだけど、それってなんかのかけひきなの?」
「え? なにが?」
「今週はだめで来週とか。動物園じゃなくて水族館とか」
「ああ」
 くすっと笑うと、
「ちがうよ。『連れてって』言われて、
『連れてってあげる』なんて言ったら、
言われたから行くだけだし、
なんだか違そうで、違うと思うんだ。
でも、来週なら行く心づもりもできるし、
このまえ行った動物園じゃなくて、
水族館なら自分でもちょっと行ってみたい。
どうせするなら、やらされるより自分でやるほうが
嘘がなくてぼくは好きだな」
 なんだかほっとためいきがもれた。

「そんなあなたがわたしは好きだな」
 頭を夫の肩に乗せると、
「あたしも好き~」
 いつからいたのか、足元から娘の声がした。
「わぁ、いたの?」
 急にはずかしくなるわたしに、にっこり。
「そんなふたりがぼくも好き。奥様、お姫さま」
 あの人がわたしと娘の頭をなでる。
 それはとても幸せで。
こんな日が続いて欲しいとわたしは願った。

テーマ:ショートショート - ジャンル:小説・文学

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