文繰文庫 ショートショート ブログ版

フミクリフミクラはショートショートのはっちゃけ文庫。文部科学雀の朝十(朝の十分読書習慣)運動を応援しています

2017-11

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ショートショート 289

●夢の奴隷

 街を歩いていたら、昔の同級生とばったり。
 思わず声をかけると、スーツを着て
むずかしそうな顔をしていた彼は、
どこか昔の面影を見せて笑った。
「ひさしぶり。今なにやってるの?」
「何って……まあ、会社の使い捨てられ担当だよ」
 スーツを見せるように軽く襟を開いた。
「どこも同じようなもんかぁ」
 わたしは苦笑い。
 そばのちょっと広いところに出て、二人で壁によりかかる。

 わたしの胸には、訊いてみたいことがうずうず。
「ね、まだ、書いてるの?」
 すると彼はわたしに振り向き、
すこしどこかに視線をそらして、
「うん、まあ」
 なんだか嬉しいような、胸が苦しいようなふしぎな気持ち。
「へえ~、いいなあ、ずっと夢があって」
 わたしが言うと、彼は。
「いいことなんて何もないけど」
 重い声で言った。
「ええ? どうして?」

 思わずきき返すわたしに、
「じゃあ訊くけど、中学校の頃、放課後ってなにしてた?」
「うーん? 部活、かなあ」
「おれは書いてた」
 そして、
「じゃあ、高校の頃、放課後ってなにしてた?」
「ううん、部活と買い食い……かなぁ」
「おれは書いてた」
 それからさらに、
「じゃあ、大学の時は?」
「バイトと……なんだろ」
「おれは書いてた」
 それからため息をひとつついて、
「今、金稼いで、なんに使ってる?」
「うん? 服とか、他のとか、いろいろ」
「おれは使い道なんてない」
 そう言って振り向くと、あきらめたように笑った。

「正直、なにに囚われることもなく
生きてる人間のほうがうらやましい。
もっと人生楽しんでみたいし、
何も考えずに寝て起きて仕事する生活がしてみたいよ」
「わたしは、自分になにもなくてがっかりしちゃうけど」
「おれは……自分の中に何かあるのがわかる。
でも、なんていうか、自分の気持ちじゃないんだよ。
仕事してる暇があったら書きたい。
残業に休日出勤、金なんかいらないから時間が欲しい。
仕事してる暇があったら書きたい。
けど、あせっていらだって、何をしなくてもいいから
とにかく書け、そうせかされてる気がする。
おれの人生なんて、そうやってただ焚きつけられてきただけ」
「そういうものですか」
「そういうものです」
 二人ならんでため息をつくと、彼は空を見上げてつぶやいた。
「おれはばかな夢に囚われた、ただの奴隷なんだろな」

テーマ:ショートショート - ジャンル:小説・文学

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://fumikurifumikura.blog73.fc2.com/tb.php/317-4fdfd5e1
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

 | HOME | 

FC2Ad

 

プロフィール

甘音(あまね)

Author:甘音(あまね)
めざせショートショート1050本!
いつだって全力疾走なのです。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

 

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。