文繰文庫 ショートショート ブログ版

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2017-10

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ショートショート 293

●世界で一番

 扇風機を回しながらアイスをかじり、漫画を読む一時。
これが世界で一番だ。
 ……と。
「こら、夏休みの宿題は終わったの?」
 母さんの声。
「ん~。まあ~」
 答えたくなくて適当にごまかそうとしてたら、
扇風機を止められた。
「なんだよ」
「どうせやってないんでしょ? 
おねえちゃんに頼んできたから、お隣行ってきな」
「なんだよ~、どうして母さんは
いつも余計なことばっか言うんだよ~」
 かっこ悪い。絶対ねえちゃんに笑われた。

 勝手に人のことを決めた母さんには腹が立つが、
ねえちゃんに会えるのは嬉しいからさっさと隣に行く。
「こんちゃ~」
 ドアの前で叫ぶと、中からにこにこと
お隣のねえちゃんがでてきた。
「いらっしゃい」
 相変わらずきれいな人だ。
「だれ?」
 ねえちゃんの足元にちっこい女の子がいて、
ねえちゃんを見上げる。
「おとなりの子」
「ふーん」
 ぱたぱたと走る音をたてて引っ込んだ。

「ごめんね。みんな出かけて、あの子だけ預かってるんだ」
 居間らしいところに通されると、中はクーラーでひんやり。
 さらに冷たい麦茶が出されて、しかたなく宿題を広げた。
「どれどれ。どんなのやってるの?」
 横からのぞきこむねえちゃん。きれいな横顔。
しかもすごくいいにおいがする。
「へええ。わからないところ、ある?」
「だいじょうぶだよ、これくらい」
 せっかくなのでまともにノートに向かっていると、
横からあのちっこいのがきて、まねするつもりなのか、
横に紙を広げてぐりぐりと何かを描きはじめた。
 ……はたから見たら、おれはこんなのと同じなのか。

 せっかくねえちゃんといるのに、
こんなちんちくりんと一緒にされて正直がっかりだ。
「できた~!」
 おれの気も知らずにがきんちょがでかい声で紙をかざす。
 ねえちゃんはそれをのぞきこみ、
「うん、上手に描けたね」
 おれだけに向けていたあの笑顔で、ちびっこの頭を撫でた。
「どう? できた?」
 急にふりむくねえちゃん。
「あ、う、うん。一問だけできた」
「うん、その調子」
 そこへがきんちょが、
「いい子いい子しないの?」
 余計な口を開いた。
 ねえちゃんはくすくすと笑って、おれのそばに寄る。
 なんだよ、ガキじゃあるまいし、こっぱずかしい。
「はい、よくできました」
 でも、白い手、細い指がおれの頭を撫でたとたん、
髪の毛がふわーっと広がっていくような、
今までにないすごい気持ちよさが体中に広がった。
「どうしたの?」
 きれいな顔できょとんと訊くねえちゃん。
「ん、べ、べつに……」
 なんてこった。ガキどもは
こんなに気持ちいい事をされてたのか。
 見ると、あのがきんちょは横でまた何かを描き始めている。
 あわててノートに向かい、
ちびっ子のようすを伺いながら必死に頭を動かした。
「でき……」
「できた!」
 おれは力一杯叫んだ。

テーマ:ショートショート - ジャンル:小説・文学

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