文繰文庫 ショートショート ブログ版

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2017-10

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ショートショート 300

●セカンドレイプ

 一緒に遊びに行くはずだった友達から
連絡が来ないまま二時間が過ぎた。
 何度電話をかけてもつながらず、
心配になって家まで行くと、
チャイムの反応はなにもないのに
電気のメーターは人がいるような動きを見せている。

 ――もしかして、中で倒れてる?
 ぞっとしながらもひたすらチャイムを鳴らし続けて、
管理人を探さなきゃだめだという結論に向かい始めた頃、
ようやく中から鍵が開く音が聞こえた。
 後ろに下がって見ていると、
ゆっくりと、でもほんのすこしだけ扉が開いて、
隙間の向こうにはバスローブを着た友達が
頭からもしずくを落としながら
青い顔に変な薄い笑みを浮かべてうつむいていた。
「ちょっ……! どうしたの!」
 中に入って鍵をしめ、肩を抱くと、
体を拭くでもなく羽織ったバスローブを通して
おかしいくらいの冷たさが伝わってくる。

「ごめんね、おくれちゃって」
 ぶるぶると震えながら、顔をそらしてつぶやいた。
「ちょっと……なにあった?」
 肩をつかんで顔をのぞきこもうとすると、
目を合わせたくないように顔をそらす。
 その横顔には殴られたような痕。
「ひどいこと、された、の?」
 ためらいながらも訊ねると、彼女の顔から涙が落ちた。
「うえぇ……」
 ぼろぼろと涙を落としながら、声をあげて泣き始める友達。
 わたしは悔しくて苦しくて、彼女を抱きしめた。
「濡れちゃう……濡れちゃうよ」
 弱々しく逃げようとするけれど。
「ばか! こんなときに人のことまで気にするな!」
 冷たい体を温めるように、強く強く抱いてわたしは泣いた。

 彼女をすこし落ち着かせて、
警察につれていったのはそれから何時間か経ってからだった。
ただなんとかしてほしい、助けて欲しい。
漠然とそんな気持でいた。
 夜中なのにそれなりに人がいる警察署の中、
友達を残してわたしは窓口に近づく。
「どうかしましたか?」
 若い感じの制服を着た男に声をかけられ、
わたしは言葉を選びながらこたえた。
「あの……友達が……乱暴されて……」
 友達に聞こえないように、声は自然に小さくなる。
 なのに、その男は後ろにいる友達の方を見ると、
なんでもないように言い放った。
「ああ、レイプですか」
 言葉を失うわたし。でも男は続ける。

「なんでシャワー浴びたんですか。
精液でも唾液でも残ってないと、
調べるだけむだになっちゃうでしょうに」
 ……目の前が真っ暗になっていく気がした。
 自分の体をむりやり穢されて、
その痕跡をどんな気持ちで残しておけと?
 怖くて悲しくてつらくて。
そんな気持ちを流すようにシャワーを浴び続けた
あの子の気持ちのひとかけらもわからないの?
 そして、後ろを向いて叫んだ。

「すいません、だれか対応お願いできますか? 
そこにちょっと、レイプされたって人が来てますから」
 周りにいた、普通の人たちもいっせいに彼女を見る。
 好奇の目、侮蔑の目、容赦なく彼女を辱める視線。
 彼女はこわばった体をぶるぶると振るわせると、
外に向かって走り出した。
 わたしもあわてて後を追い、
すこし走って彼女の後ろ手をつかまえる。
「う……」
 悔しそうに声を殺して泣く彼女。
「ごめん、ごめんね……」
 謝りながら、わたしはただ彼女を抱いた。
 助けてくれると思ってた。何とかしてくれると思ってた。
 でも受けたのはレイプに等しい辱めだけだった。
 悔しくて悔しくて。わたしはただバカは死ねと祈り続けた。

テーマ:ショートショート - ジャンル:小説・文学

コメント

こんにちは。
わたしの文は不満を表現して気分を変えるような
箱庭的なものですので基本的に不毛です。

現在の世の中を思うと、かつてロシアの人から聞いた、
「かつては車でも洗濯機でも待てば手に入った。
いまはどれでも選んでいいと言われるが、
なにを選べばいいかわからない」というような言葉が
頭に残っています。

自由は麻薬と同じ。少量なら人の薬効がありますが、
大量に与えられると中毒を起こしてしまうのでしょう。

頑張ってますね

お久ぶりです。
創作順調のご様子、うれしい限りです。
甘音さんの社会風刺効いてますね。私は大好きです。
最近、「時代劇専門チャンネル」で栗塚旭ドラマ特集が組まれており、私が小学校から高校時代に放送された当時の番組が7月から開始されました。「新撰組血風録」「天を斬る」「燃えよ剣」。9月からは、用心棒シリーズがスタートするのではないかと期待しております。「新撰組血風録」がスタートした7月。録画したまま、一度も見てなかったNHKの大河ドラマ「新撰組」一年分を一週間かかって観賞いたしました。その後「壬生義士伝」全話観て、「新撰組血風録」を毎日録り貯めた分を八月の中旬に観て残りを観賞。
幕末と現在の世がかなり似通っているように思えました。
今回の「セカンドレイプ」でも感じたのですが、世も末。
「人は平和を求め、安全を求め、差別を嫌い」様々な運動を続けている傍ら人を差別しているように見受けられます。子供の頃は多少とも親に守られていたかも知れませんが、大人たちは露骨です。
他人のことを善く言う人は稀です。親切が裏目に出ることも多くなりました。
「なぜ?」
 ひとつは国の政策にあるからです。
 ひとつはお笑い番組ばかり観て、その日暮らしにかまけている国民も原因です。
 また、ひとつ世の危機情報を解っていながら、何もしない人々も同類です。甘音さんの諷刺の聞いたショートショートは、少しでも「世直し」を考える人々の「きっかけ」を掴む事ができるでしょう。頑張ってください。
こちら創作に関しては、ここ一年スランプ状態です。
「ビデオばかり見ないで、何かをやれ!」と云われそうです。
  それでは、また。
更新してない「ブログ」に来ていただいてありがとうございます。
約束はできませんが、ある問題が進展しだい、ブログを開始したいと思ってはいます。

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