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2017-10

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ショートショート 357

●誤診

 わたしはお医者さん、内科医だ。
 正診率は約四割。
それを高いと見るか、低いと見るかは相手におまかせ。


「パソコンが動かなくなっちゃったんですけど」
 今日もまた、助けを求める電話がくる。
「具体的には、どんな状況ですか? 
たとえば電源を押してみると、どうなります?」
「何にも反応ないですね」
 電源を押して反応なし……。電源ユニットだろうか? 
それとも、もしかすると、

「電源ケーブルが抜けている、ということもありますので、
パソコン本体にささっている部分を一度抜いて、
またさしてみてください」
「……はい。しました」
「それから、コンセント側のケーブルをいったん抜いて、
さしてみてください」
「できました」
「それで、電源ボタンを押すと、どうなります?」
「ん~、とくに反応なしですね」
「パソコンの後ろ、ファーン、というような音、
小さな扇風機みたいなものがあるのですが、
動いているような音はしますか?」
「え、と。うーん、特にないみたいですね」
 ……とすると、マザーボードで信号が止まっているか、
電源自体が死んでいるかのどちらかだろうか。

「どうやら、修理が必要のようですね。
こちら、機種の型番やシリアル番号はおかりになりますか?」
「ん~、よくわかんないけど、普通のだよ、普通の」
「ラップトップ……ノートパソコンや、
ブック型……薄い形ではなくて、タワー型、厚みがあって、
でんと置くタイプでよろしいですか?」
「あ、うん、それそれ」
 そこでわたしは診断書に症状と病名を書く。
  『電源が入らない』
  『マザーボード故障、もしくは電源ユニット故障と思われます』
 家に来て直して欲しいというので、外科医メンバーに送信。

 しばらくしたら、そのお客さんのところに出向いた、
担当から電話がかかってきた。
「パソコン、動いてるみたいですよ」
「ええ?」
「電源ボタンを押したら音も鳴るし、ランプもちかちかします」
「後ろのファンはどうです?」
「風も出てるし、普通に動いてると思います。
どうも電源が入らないんじゃなくて、
モニタがつかないだけみたいですね」
「ええ~」
 というと、まず電源の異常はないし……。
どっちかというと、モニタ自体かな?
「モニタの動作、ためせる何かはありませんか?」
「えーと? 持ってるノートでもいいですかね?」
「だいじょうぶです」
 そしてすこし。
「あ、映りましたね」
「うーん、なるほど」
 とすると、マザーボードのモニタ出力系統あたりかな?
「モニタのケーブルはマザーボードですか?」
「いや、マザーにコネクタはないですね。別のところから出てますよ」
 むーん、増設かあ。
となると、グラフィックボードが死んだ可能性が一番。
「グラフィックボードは持ってますか?」
「今日はないです。とりあえず、
持ってきたマザーと電源に変えてみます?」
「そう……です、ね。電源は特に必要なさそうですが、
マザーボードは交換してみる価値はあるかもしれません」
「じゃあ、もし変えて変わらなければ、
元に戻して再訪問でいいですかね?」
「そうですね。それでお願いします」

 そして次の日、同じ修理担当から電話がかかってきた。
「とりあえずグラフィックボードを
新しいのに変えてみたけどだめで、
マザーボードも交換してみたけどだめです」
「えええ?」
 となると、なんだろう。デュアルモニタ設定にして、
片方を使えなくしてる可能性は……
バイアスも見られないからだめか。
あたらしく持ってきたグラフィックボードも壊れてるとしたら? 
グラフィックボード半刺しは? ……音が鳴るかな。
「あの、起動したとき、変な音はしませんでした?」
「うーん。いや、別に普通だった気がします」
「念のため、もう一度グラフィックボードを抜いて、
しっかりさしてもらえますか? 
半分刺さったところで意外としっくりくることがあるので、
惑わされずにしっかり奥までさしてください」
「じゃあ、この板抜いて、
しっかり刺してからはめたほうがいいですかね?」
 この板……?

「この板って、グラフィックボードですか?」
「いや、なんていうんですかね。
マザーボードに、なんか立てる場所があって、
そこに立てた板に差し込む感じです」
 まさか、それって……
「ライザー!?」
「ああ、それ、たぶんそれです」
「ええ、だって、パソコン、普通のタワーですよね?」
「いや、違いますよ。なんて言うか、薄いやつです」
 ブック型だ……。
「ええ~。ならたぶん、それです。ライザー基盤」
「え? これですか?」
「全部変えても変わらないなら、それくらいしかありませんから」

 そして次の日の夕方、クレームが入ったと連絡が来た。
 内容。『修理で三回も家に来て、時間も用事もつぶされた。
自社製品くらい一回で直せないのか。会社の対応を疑う』。
 修理の受付番号を見てみると、昨日おとといの、あの物件だった。


 わたしはパソコンのお医者さん、内科医だ。
 正診率は約四割。それを高いと見るか、
低いと見るかは相手におまかせ。

テーマ:ショートショート - ジャンル:小説・文学

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