文繰文庫 ショートショート ブログ版

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2017-08

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ショートショート 403

●『好き』のS-O-R

「あそぼー!」
 実習先に行くと、いつものように
小学生の小さな女の子が駆け寄ってくる。
「はいはーい、じゃあ、どうするの?」
「うーん、どうしよっか」
 そして縄跳び、かけっこ、鬼ごっこ。
夏休みのこの暑さの中、よくもこんなに動き回れるものだと思う。

「ち、ちょっと休憩ね」
 すこしは涼しい建物の中に入り、ぺたっと座って一休み。
 わたしなんて帰ったらくたくたで、
なんとかシャワーを浴びて寝るだけなのに、
こどもたちはこれだけ遊んで夜中まで起きてるらしい。
この底抜けの元気は、きっと宇宙のどこかにつながっていて、
そこからなにかの力を吸収しているからだ、なんて思えてしまう。
「ねー、まだー?」
 汗だくのわたしにべたっとくっついてくる女の子。
「待って、待って。すこし中で遊ぼう?」
「うん。じゃあ行こ!」
「はーぁい」
 だるい体を起こして、引っ張られるまま遊び部屋に行った。

「なにする、なにするの?」
 わたしの周りをくるくると走る小さな体。
しばらく他の人と遊んでて~、
なんて言っても納得してくれなそう。
なのでどうにか体を動かさなくていい遊びを考えていると、
床に落ちている輪ゴムを見つけた。
 小指にひっかけ、親指を回し、伸ばした人差し指の爪に。
これで小指を離すと――ぱちん。狙う先の壁にあたった。
「わ、どうやるの?」
 きらきらと目を輝かせて覗き込む顔。
 飛んだ輪ゴムを拾って指に。
「こうやって、親指をまわして、こう」
 小さな手に手を添えて輪ゴムをかけると、壁に向かって発射した。
 驚きのような、自信のようなものをあふれさせてわたしを見、
「うん!」
 わたしがうなづくと、顔中で笑った。

 それからもう一本落ちていた輪ゴムを拾って、
ふたりで的を狙って順番に撃ちっこ。
「はい、またわたしの勝ち~」
「むー。どうやったらあたるの?」
「え?」
 そういえば、てっきり知ってるつもりになって、
狙い方なんて言ってなかったっけ。
「なるべく指をまっすぐにして、飛ばすほうを見て……」
 ひゅっ。
 かがんで頭を寄せながら狙いをあわせると、
かなり近いところへ飛んで行った。
「うわ、おしい」
 頭の横で女の子の声。
 そして、ちゅっと頬に何かがあたる感触。
「え?」
 見るとぱたぱたと輪ゴムを取りに行き、
振り返ると照れたようなはにかみを浮かべた。

 ――わあ……。
 その瞬間、すべてがわかった。
いつもわたしのそばにいたのは、わたしが好きだったからなんだ。
 ああ、なんだろう。すごく、嬉しい。
 わたしが何かをして、その子が反応する。いつもと同じことなのに、
わたしを好きでいてくれると思うと、それがすごく嬉しい。
 好きでいて、好きでいられるって、
自分が渡す以上のお返しを貰っていたんだ。
「……大好き」
 心のままに抱きしめると、
女の子は嬉しそうにくすぐったそうに目を細めた。


テーマ:ショートショート - ジャンル:小説・文学

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