ショートショート 548
●ば化粧
地方を旅していたときのこと。
道の端にこぢんまりとしたものの立派なおやしろがあり、
その中には何かで真っ白に塗られた石が立っていた。
その前には口紅などの化粧品。
興味をもったわたしは地元の人を見つけ、声をかけてみた。
「これはなにを祀っているんですか?」
「ああ、それはバケショウさまだ」
お年を召した女性が笑う。
その顔は農作業向けのような服装に似合わず、
どこかに出かけるばかりにきれいにお化粧されていた。
「バケショウさま?」
「ああ。何百年もまえ、ここらへんがまだずっと貧しかったとき、
化粧の大切さを教えてくれた人だよ」
「へええ〜」
あらためて白く塗られた石を見て、
女性運動のさきがけだったその人に思いを馳せてみる。
このおばあさんがしっかりとお化粧しているのも、
その影響なのだろうか。
「ずいぶんきれいなかただったんでしょうね」
わたしが言うと、
「いや」
「えっ?」
あまりに短い言葉をききかえす。
「それがな、紅がないなら生肉を。おしろいがないなら麦粉をて。
化粧したのはいいものの、口から血を流し、顔は粉をふいて。
髪もごわごわになったその姿は――まるで悪鬼のようだったそうだよ」
地方を旅していたときのこと。
道の端にこぢんまりとしたものの立派なおやしろがあり、
その中には何かで真っ白に塗られた石が立っていた。
その前には口紅などの化粧品。
興味をもったわたしは地元の人を見つけ、声をかけてみた。
「これはなにを祀っているんですか?」
「ああ、それはバケショウさまだ」
お年を召した女性が笑う。
その顔は農作業向けのような服装に似合わず、
どこかに出かけるばかりにきれいにお化粧されていた。
「バケショウさま?」
「ああ。何百年もまえ、ここらへんがまだずっと貧しかったとき、
化粧の大切さを教えてくれた人だよ」
「へええ〜」
あらためて白く塗られた石を見て、
女性運動のさきがけだったその人に思いを馳せてみる。
このおばあさんがしっかりとお化粧しているのも、
その影響なのだろうか。
「ずいぶんきれいなかただったんでしょうね」
わたしが言うと、
「いや」
「えっ?」
あまりに短い言葉をききかえす。
「それがな、紅がないなら生肉を。おしろいがないなら麦粉をて。
化粧したのはいいものの、口から血を流し、顔は粉をふいて。
髪もごわごわになったその姿は――まるで悪鬼のようだったそうだよ」
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