文繰文庫 ショートショート ブログ版

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2017-07

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ショートショート 611

●なぞなぞ王

 休日出勤で会社に向かう電車に乗っていると、
前の座席に座る小学一・二年くらいの男の子が
隣に座る三十過ぎくらいの男に声をかけた。
「ねえ、おじさん。水を一瞬でこおりにするには
どうすればいいか知ってる?」
「うん? 何を使ってもいいの?」
「いいよ~」
 男の子はいやらしい笑顔で男の答えを待つ。
 会話からすると、甥っ子のめんどうを見させられているおじさん、
といったところだろうか。
「そうだな。じゃあ、次の水の日で、
満月が重なるときは……五か月後の二十六日だな。
その日に銀のコースターの上に水を口まで注いだ
黒色のガラスのコップを置き、その上に樫の枯れ枝を載せて、
すこし大きな岩塩を沈めながら水に語るんだ。『今は冬ですよ~』って」
 すると男の子は、
「ちがうよ~、ざんねーん」
 聴いていてヘドが出そうないやらしい口ぶりで言った。
「正解は、水に点をつけるだけ。『水』が『氷』になるでしょ」
 でも男は楽しそうに笑い、
「ああ、なんだ、そういうことかぁ。ひっかかっちゃったな」
 くだらないなぞなぞだ。それになんてくだらないこどもだ。
 嫌な気分になりながら電車から降りたものの、
男が言った言葉がとても気になって
思い出せる限りその内容を手帳に書き留めておいた。

 そしてそこから五か月後、男が言った日。
 自分の目すら信じられなくなるできごとがそこで起こった。


テーマ:ショートショート - ジャンル:小説・文学

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