文繰文庫 ショートショート ブログ版

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2017-11

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ショートショート 613

●みかた

「そうそう、~~ってさぁ」
 社員食堂、後ろから聞こえた言葉に意識がひかれる。
今、おれの名前が出なかったか?
「なんでいつもあんなに偉そうなんだろうね」
「ああ、うん! 役職かっての」
 それから下卑た笑い。
 なんだか急激に食欲を失ったが、
なんとかむりやりつめこんで席を立った。

「なあ、ちょっと訊いていいかな」
 家に帰ってから彼女に電話。
すこし遅かったけれどどうしても訊きたかったし、
なにより声が聞きたかった。
「どうしたの? かけてくるなんてめずらしいね」
 聞く限りは明るい声。でも、本当は? 
その後ろでは何を思っているんだろう。
「……どうしたの?」
「ん……」
 あらたまって訊かれると言いにくい。が、何とか口を開いた。
「なんで、おれなんかと一緒にいてくれるんだ?」
「こら。わたしにはいつも、
『自分のことを「なんか」で言うな』って言うくせに」
 こどもをたしなめるような口ぶりで、いたずらっぽく笑う声。

 ふと間があき、
「なにか、あったの?」
「ん。今日食堂入ったら同じ部屋の女二人が
話してるのが聞こえて。おれがやけに偉そうだってだって言ってた」
「あははっ、なーに、それ?」
 笑った。なんの、含みもなく。ただ冗談を聞いたみたいに。
「なんで。そう、思わない?」
「思わないよ。だって、いつも優しいし」
 柔らかな言葉に、どん と胸を叩かれたような感覚。
「な、なんだよ、それ」
「あ、照れてる?」
 からかうような、でも嫌味ではない、胸をくすぐる響き。
「あはは、かわい~!」
「なんだよ、やめろ~。こっぱずかしい」
 ひとしきり笑ったあと、笑い疲れたように ふう、とため息。
「でも、ほんと。わたしはそんなこと思わないけどなあ。
……それはもう、人のみかたの差なのかもね」
 そして、芯のあるはっきりとした口調で。
「でも、他の人みんながあなたを悪く言おうと、
あなたがわたしを支えてくれるように、
わたしだけはいつだってあなたのみかただからね」
 胸の奥にこみ上げるものに、
喉がつまって何も言えなくなってしまった。

テーマ:ショートショート - ジャンル:小説・文学

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