文繰文庫 ショートショート ブログ版

フミクリフミクラはショートショートのはっちゃけ文庫。文部科学雀の朝十(朝の十分読書習慣)運動を応援しています

2017-05

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ショートショート 631

●たてわり

 空が、夜ではない暗さに覆われ始めた。
下から湧き出た闇に昼が飲み込まれていくような、そんな異様な光景。
 禍々しい気配に身震いしていると、
「まさか! そんなはずはない!」
 電話を受けていた室長が叫んだ。
 それから二言三言相手に話して電話を切ったところで訊ねる。
「どうかなさったんですか?」
「おかしい……。こんなことになるはずがないんだ。
魔法陣から何かが具現しそうになっているらしい」
 不安そうな目がわたしに。
「そんなはずはないんだ。あれは間違っても
他の法陣として機能しないようにと、
わたしが何回も修正と調整を行って作りあげた法陣だぞ。
しかも敵の目を欺き戦意を喪失させる護国陣。
なにかが召喚されるはずがない。なぜだ!」
「僭越ですが、室長。法陣は誰が書くかご存知ですか?」
「それはどういう……」

 そこへ赤色灯が点滅し、画像が送られてきたことを告げる。
「室長」
「ああ、うん」
 机の画面に二人で目をやりながら問題を探そうとしたものの、
「なんてことだ」
 難しい問題以前の問題に室長が言葉を落とした。
「法陣に息吹が感じられない。
一息で書くべき場所もごまかしばかり。なぜだ?」
「お金でしょう。仕事に誇りもなく
お金だけに関心がある彼らには、書いているものにどんな意味があり、
だれの役に立つのかもまったく知りませんし、
知りたいとも思いません。自然に適当にもなろうというものです」
「だが、それを検査する仕組みが何重にもあったはずだろう? 
一息で書く、目を瞑り書く、念をこめて書く。
そんなもの、見ていれば簡単にわかるはずだ」
「彼らは法陣についてなにも知りません。
書き方も構文すら知らないのです。
それが検査する方法といえば、どういうものだと思いますか?」

「どうなんだ?」
「間違いなくできたかと周りにたずね、
できあがったものを遠くから眺めすかすことです」
「ばかな! そんなものまったく意味がないじゃないか」
「そうですね。ですが……」
 壁を抜けて、向こうのほうから闇が近づいてくる。
「そうだ、君ははじめからそう言っていたな。
施法も祈祷もわたしたちが管理してやるべきだと」
「今さら言っても仕方のないことですが。
この度の失敗の原因は何とお考えになりますか」
 目を開けているのに開けていないほどの黒。
「構文の失敗……人員の……いや。そうか」
 途切れる声に、視界の闇。
 わたしは声も出せずに泣いた。


テーマ:ショートショート - ジャンル:小説・文学

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://fumikurifumikura.blog73.fc2.com/tb.php/659-8896b130
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

 | HOME | 

FC2Ad

 

プロフィール

甘音(あまね)

Author:甘音(あまね)
めざせショートショート1050本!
いつだって全力疾走なのです。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

 

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。