文繰文庫 ショートショート ブログ版

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2017-06

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ショートショート 782

●こころから

 おふとんの中のおじいさんは、とても穏やかなお顔だった。

 長い間入院していたために
周りの人との関係は薄くなっていたけれど、
かつてのおじいさんを知る人がたが集まっていた。
 見たこともない人たち。
知らなかったおじいさんのことがその口から語られる。

 生まれから苦労も多く、若いうちから家の手伝い。
兄弟や家計を助けながら生活し、
勤めては人にだまされ全てを失い、
這い上がってはもらい火で家まで失い、
自分の家を建てれば騙し取られて、こどもを生めば逝去して。

 苦労の中で生まれ、しあわせをつかみかけると
まるで狙いすまされたように奪われていく人生だった。
 わたしの知るころのおじいさんは
ゆったりとすごしていたけれど、
その中でも心無い人とのいさかいに心を痛めていたと聞くと、
こころをすりつぶされるような思いがした。

 でも。

 おふとんの中のおじいさんは、とても穏やかなお顔で。

 もしかしたら、おじいさんの今生は
苦難を乗り越えてあきらめずに生きることを
学ぶ人生だったのかもしれない。
 もしそうだとしても、
おじいさんはそれを立派にやり遂げ、
ようやく安らかな眠りについたんだ。

 ――おつかれさま。

 仕事の終わりに軽々しく口にしてきたけれど、
わたしははじめて心の底からその言葉を思った。

テーマ:誰かへ伝える言葉 - ジャンル:小説・文学

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