文繰文庫 ショートショート ブログ版

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2017-10

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ショートショート 799

●君は知らない

 平日の昼間、家庭教師先の子を誘って車で出かけた。
 すこしおめかしした彼女を連れて行くのは、
このまえ目星をつけた場所。
「わあぁ、かわいい~!」
 大きな門をくぐるなり、彼女は声をあげた。
 レンガ造りの道に建物、目を上げれば時計塔。
すこしすすめば手入れされた庭があり、
その中には優雅なお茶会でも開いていそうな東屋まである。

 まるでここだけがいきなり外国になってしまったような雰囲気に、
「ねえ、先生、見て! かわいい」
 普段ではすこし浮いてしまいそうな
ふわふわの服を気にしていた彼女が、走り出しながら笑顔を見せる。
「うん、知ってる」
 軽く手を振って応えながら、ファインダー越しに、
ファインダーなしにその姿を追った。
 整然と並ぶ小さな小さな一戸建てのドアをノックし、
ドアを開けては入っていく。
「すごいよ! 中にかわいい椅子にベッドもあるんだよ」
 それが礼儀のように腰をおろしてはぎこちなく座る姿は、
まるで小人の国に迷い込んだお話の子みたいだ。
「ああ~! こんなかわいいの、見たことない」
 うれしそうにきらきらとほほえむけれど。
 ――でも。どこにいたって、何を見たって。
彼女は決して知らないんだ。
 世界で一番、かわいいものを。

テーマ:ショートショート - ジャンル:小説・文学

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