文繰文庫 ショートショート ブログ版

フミクリフミクラはショートショートのはっちゃけ文庫。文部科学雀の朝十(朝の十分読書習慣)運動を応援しています

2017-10

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ショートショート 811

●死ぬために生まれた

「なあ、おれたちってなんなんだろうな」
 矢筒の中、一本の矢が声を出した。
「おれたちは射たれるためにある。
けど、そのときを長いこと待っていても……
本当の『矢』でいられるのは一瞬。弓につがわれ、放たれれば
次の瞬間には存在意義を失うんだ」
「何を言う。花火だってセミだってそうだろう?」
 別の矢が応えた。
「でも、花火は一瞬で人の心を魅了する。
セミは次の世代に命をつなぐ。でも、おれたちはどうだ。
人を殺すため、何かを壊すため。他のもののように
なにかを残すことすらできないんだ。
生まれた瞬間からこんなにはっきりと死を予感する存在。
……おれは! 何のために生まれたんだ!」
 沈黙があたりを包み、しばらくのあと、別の矢。
「おれは、そうは思わない。たとえどう使われようと、
放たれるために生まれたんだ。その直後に待つのが死だろうと、
おれは自分が一番おれらしい時間を迎えるのを楽しみに思うよ」
 そこへ、人。いかつい顔の男が矢筒を手にし、歩き出した。
「ほら、とうとうこのときが来たぞ」
 わきあがる期待と不安。矢たちはそれぞれに
一瞬一瞬を胸に刻み込みながら、迫り来るその時に備えはじめる。
 そんなことはつゆ知らず、男は部屋の中に腰を下ろすと
矢を一本ずつ引き出し、三人の息子らしい男たちの前に置いて、言った。
「さあ、その矢、おまえたちに折ることはできるか?」

テーマ:ショートショート - ジャンル:小説・文学

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://fumikurifumikura.blog73.fc2.com/tb.php/839-d067c8f0
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

 | HOME | 

FC2Ad

 

プロフィール

甘音(あまね)

Author:甘音(あまね)
めざせショートショート1050本!
いつだって全力疾走なのです。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

 

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。