文繰文庫 ショートショート ブログ版

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2017-10

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ショートショート 959

●知らない

 部活の片付けも終わってみんなで教室に戻ると、
友達が先生と楽しそうに話していた。
 わたしたちに見せるものとは違う柔らかな笑顔に輝いた瞳。
本人に訊いたところで気付いてないかごまかすかの
どちらかだろうと思うけど。

「あ、来たね。帰る?」
 わたしたちに気付いた先生が言うと、
「うん。じゃ、また明日ね」
 友達は小さく手を振って、わたしたちのところに走ってきた。
「じゃあみんな、気をつけて帰りなよ」
 はーい。
 答えるわたしたちに笑顔を残して先生は廊下を歩いていく。

「いいのぉ? もっと話してても良かったのに」
 ひじでつつきながらわたしが言ったら、
「な、なによぅ。帰るの待ってたんだから、帰るでしょ?」
 にらむように応えた。
「なんならわたしたちだけで帰るから、もっと話してれば?」
「ああ~、先生ー、行かないで~!」
 冷やかすわたしたちにむくれ顔。
「なんでそうなるの。……ただちょうどいたから話してただけだって。
そもそもあんな年上じゃない」
「うんうん」
 友達を軽く囲むようにわたしたちは言った。
 「わたしたちからすればおじさんだしねえ」
 「そのわりに黒板もうまくないし」
 「冗談はつまんないし。まじめ以外にとりえは無いし」
 「授業は堅苦しくて息が詰まるし」
 「ネクタイなんて三本しかないって言ってたしね」
 「スラックスだって何日も同じの履いてるし」
 「あんなの気にする人いないよね」
 すると、
「なに知ってるの!?」
 廊下なのに本気で叫んだ。
「先生がどれだけがんばってるか知ってるの? 
毎日何時間も授業のためにプリントとか作ってるんだよ。
放課後にだって黒板書く練習してるし、部活の練習で
朝早くから来たら寝る時間なんてほとんどないのに。
だから休みの日だってくたくたでクリーニングも出しにいけないし、
服だって買いに行けないんじゃない!」
「うんうん」
 びっくりしながらうなづくわたしに、はっと気付いた顔をする。
 そのままぎこちなくわたしたちを見回して……
頬がおもしろいくらい一気に真っ赤に染まった。
「だましたなぁ」
 涙目の消えてしまいそうな声で。
「あはは、ごめん。でも先生のこと、ずいぶん知ってるねえ」
 すると彼女は顔をそらして、叫んだ。
「し……しらないっ!」


テーマ:ショートショート - ジャンル:小説・文学

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